涙やけのお話 その1
これもお店でご相談が多い内容でして。
『うちの子、涙やけがヒドくて・・・』
最近では、涙やけが改善しますよ♪、という謳い文句のドッグフードなどもありますよね。
涙やけの原因は何?なぜフードで改善する、って言えるの?
獣医師側からすると、【フードだけですべてが改善することはないでしょ~よ】って思いますが、食べるものも大切な理由があると思うので、そのあたりを私の理解の範囲で解説します。
もともと涙は、両まぶたの裏にある【涙腺】から分泌されます。水っぽい涙と脂っぽい涙の混合物が眼球にとどまって、目の潤いを保っている、そんな感じです。
涙は24時間常に分泌されているわけですから、そのままだと溢れてしまいます。お風呂を沸かすのに、お水を出しっぱなしにしておいて湯船から溢れ出してしまう、、、そんな感じです。
溢れ出さないようにしている器官が【鼻涙管】と言います。
鼻涙管は、上下のまぶたの内側(鼻に近いほう)に2本、溜まった涙を排泄するための管があるんです。
涙腺で生成された涙のうち、不要な分はその【鼻涙管】を通じて排泄され、涙があふれ出ないような仕組みになっている、というわけです。
涙やけは、涙の生成と排泄のバランスが崩れて、涙が目からあふれ出るので、それが目頭に溜まってしまい、その涙の成分が空気に触れて酸化することで透明色だった涙が茶褐色になり顔が汚れてしまう状態なんですよね。
マルチーズや白のトイプードルさんは白い毛が茶褐色に染まってしまうので、せっかくの可愛いお顔が茶色くなってしまう。
なぜ涙が溢れるのか。 涙の生成量が異常に多い。
この理由としては、
●眼瞼内反症(まぶたが内巻になってしまい、まつげが当たる)
●逆まつげ(まぶたの内側に太いまつげが生えており、それが眼球を刺激する)
●眼瞼に腫瘤がある(できものが眼球に当たってゴロゴロするので刺激で涙が多く出る)
いずれも目に何かが【当たって】ゴロゴロするので涙が増えるということです。
これは24時間、目にゴミが入っているのと同じ状態なので、自分に置き換えたら当然のことですよね。
● 鼻涙管が細い・詰まっている。
鼻涙管は、【管(くだ)の穴】というよりは、【目の粘膜のシワ】のような部分から髪の毛くらいの太さの管が鼻まで伸びており、涙がそこから排泄される感じです。小型犬でも小ぶりのワンコさんでは、生まれつきこの鼻涙管が細すぎるか、途中で管が詰まっているケースがあり、細すぎると生成と排泄のバランスが崩れて溢れる傾向になります。
細すぎれば当然、排泄のペースが間に合わないので涙が溢れます。
詰っている、、、ゴミが詰まっているのであれば、細い管を通して水圧で洗浄すれば汚れは流れていきますが、何らかの事情で管が完全に潰れてしまっていると、当然のことながら、涙の出口がないので目から溢れ出ます。
風呂の排水溝がうまく機能しなければ、お風呂は溢れるよね、、ってこと。
これが、物理的事情だったり、解剖学的事情だったりします。
この閉塞系のワンコは、目頭が常に涙でベタベタなケースが多いような気がします。
これらが解決しなければ、フードを変えたところで解決は難しいと思うんです。
小型犬はもともと細いケースも多いですが、さらに汚れが詰まっているケースが多いので、【鼻涙管洗浄】という処置をお願いすると、それで解決する場合も多いです。(ただし、鎮静下だったり、軽い麻酔処置が必要な場合もあります)
うちのトイプードルの【るいちゃん】、その名前の由来は実は【涙やけがひどかった】というもの。
避妊手術をするときに、鼻涙管洗浄したことで、涙やけは解消しました。
鼻涙管は細かったですけどね。。
これらが原因ではないけど、涙のせいで目頭が茶色に染まる・・・という場合。
これが涙の【質】に関わってくるので、食べ物や体質が関わってくるのかな、と思います。
飼い主さんが知りたいのはこちらかと思いますが、長くなったのでこれは次回に(^-^)